MIMASAKA
MAGAZINE ふるさと図鑑
下山さんちのお茶 (株)クオリティープランテーションズ
vol.2五感を研ぎ澄ませて極めるお茶の味
色を見て、香りを確かめ、見極める技
午後からは茶工場で、摘み取った新芽を茶葉に製造する「製茶」作業が行われる。茶畑で摘み取った新芽はまだ生きているため、放置していると酸化し発酵が始まってしまう。品質の劣化を防ぎ、鮮度を保つために冷たい風を送る。そのうえで、酸化酵素の働きを止め生葉の青臭さを取り除くために蒸気で蒸す。さらに、茶葉の色を保ち、香りを引き出すよう水分をとばしながら茶葉を柔らかく揉み、長期保存するために乾燥させる。丹精込めて育てた茶葉の良さを最大限に引き出すのは、この一連の作業にかかっている。
「簡単にいえば摘んだ新芽を蒸す、揉む、乾燥する工程なんですが、中でも蒸し加減が一番のポイントですね。香りや色などの仕上がりを左右する大事な工程になります。蒸し加減が浅かったら渋くなるし、逆に蒸し過ぎてしまうと味がとんでしまう。調整はすべて感覚です」
機械が行うとはいえ、乾燥時間や回転数などの設定はすべて人の手で行われる。茶葉の育ち具合や水分含量、その日の天候や湿度など条件に合わせて微妙な調整が必要だ。実際に茶葉を手で触り、色を見て、香りを確かめ、見極める技術。マニュアルがあるわけではなく、経験で培われた感覚だけが頼り。下山さんはより質の高いお茶を生み出すため、毎年のように春になれば静岡の師匠の元へ通い、摘み取り作業を手伝いながら製茶技術を学んだという。
日々最高の味を目指して
おいしいお茶に仕上げるため、欠かせないのが各工程でのテイスティング。湯を注いで香りを嗅ぎ、味をみて、細心の注意を払って仕上げていく。火が入る前、力を加えて揉み込む「揉捻(じゅうねん)」を終えた茶葉はうま味が引き出され、下山さん曰く「茶工場でしか味わえない生茶」。飲んでみると、フレッシュハーブティ―のようにあと味はさわやか。ギュっと濃縮された青っぽい香りが口の中で広がった。
製茶工程が終わった茶葉は「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれ、重さによって茶葉、茎、ケバに選別されていく。ケバは市場に出回ることはないが、香りも味も極上だという。その後、さらなる選別工程を経て、煎茶や青柳、かりがねに分けられていく。
日々条件が変わり、蒸しから乾燥まで4時間かかるという製茶作業。お茶の味は毎回目指す味になっているのだろうか。「アーティストと一緒で、完成してみないと分からないものです。でも、毎回納得する味には仕上がっています。ただ、完璧な味だと思えたことはまだ1回もないですね。ゴールだと思える味を再現できることって何度あるのか。そこは一生追及していくものだと思います、日々最善を尽くしながら」。
「茶師」として実力を磨き、岡山県茶品評会をはじめ数々の受賞歴がある下山さん。目指すお茶の味とはどんなものだろう。「コーヒーと同じようにお茶も産地が違えば味も変わってきます。静岡などの平野部と違って、この山間部で栽培される茶葉は繊細でみずみずしく、昼夜の寒暖差の影響で味にコクが出る。色は薄いけど香り高く、あと口が心地いい。それがこの美作市海田地区の味ですね。その味を引き出したい」。
新茶の時期はピーク時で1日2トン。製茶にして400キロが出来上がるという。夏場は40℃以上にもなる茶工場で、新茶の時期は深夜まで製茶作業が行われている。
(2018年5月取材)
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2017-02-19