ふるさとおこしプロジェクト

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TSUYAMA

MAGAZINE ふるさと図鑑

津山市城西地区

vol.2 津山城下最大の寺院集積地
江戸時代の面影を感じながら歩く

津山藩の初代藩主・森忠政が城を築いたのは、戦国時代からの過渡期で不安定だった江戸時代初期。戦を念頭に置いた城下町づくりが進められ、東西の端に寺院を集中させた寺町を形成。城西地区は意図的に寺院が集められ、西から攻めてくる敵から城下町を守る役割を果たしていたといわれる。通りに続く白壁の塀と瓦屋根、豪壮な仏閣建築が建ち並ぶ西寺町は、当時の面影を今に伝えている。

津山の歴史を刻んだ
津山藩主・森家の菩提寺「本源寺」

津山城を築いた森家の菩提寺である「本源寺」。森家の家紋「鶴の丸」が印された本堂は1607(慶長12)年の創建当時の建物であり、霊屋(たまや)、庫裏(くり)などとともに国の指定重要文化財。本堂には御本尊に釈迦牟尼仏、右に達磨大師、左には津山城の森忠政像のモデルとなった木像森忠政坐像が祭られている。木像は1631(寛永8)年に製作。忠政が62歳の時のもので、還暦の祝いと長寿の願いを込めた像と伝えられる。「忠政公がご存命中だったことから、本人の外見に非常に近いものといわれています」と華山義道住職。津山の城下町絵図を示しながら、城下町の成り立ちや森家のエピソードを分かりやすく説明してくれる。

自分と向き合う静かな時間が過ごせる座禅体験。肩をたたいてもらうと、スッと気持ちが爽やかになる。

霊屋表門を入り、石敷きの参道を抜けていくと立派な大名墓が見えてくる。森忠政の大型五輪塔墓は高さ5.15m、幅3.3mもあり、威厳を放っている。墓所からは、遠くに津山城の備中櫓を見ることができる。津山城から西に位置する本源寺について、華山住職が教えてくれた。「昔から西の方角には極楽浄土があると信じられてきました。城の西に菩提寺を建立し、その先にある極楽浄土に向かって手を合わせていた姿を想像することができます」。400年前の様子を思い描きながら、本源寺を後にした。

本源寺の霊屋、霊屋表門は寛永16年(1639年)建立。いずれも金襴巻状や亀甲模様など精緻な地紋彫が施され、見ごたえ十分。普段は扉を閉めているが、森忠政の命日(7月7日)の法要にあわせて一週間ほど一般公開している。

津山藩主・松平家の菩提寺「泰安寺」
新たなアートスポットに

森家の後に津山藩主となった松平家の菩提寺「泰安寺」。松平家の家紋「葵の御門」が印された本堂は1644(正保元)年の建立で、表門とともに県の重要文化財に指定されている。境内にある霊屋には松平家代々の位牌と、徳川家康から8代将軍吉宗までの将軍家の位牌が祭られている。松平家藩主が津山に在城の間は、しばしば寺院に参詣する。中でも菩提寺であった泰安寺は特別な存在だったといわれている。

泰安寺では写経体験も受け付けている。心を無にする貴重な時間が過ごせる。

津山藩松平家歴代藩主と徳川家8代将軍の位牌が祭られている霊屋。
位牌は、戦時中には防空壕に入れられたため、消失を免れたという。

泰安寺には津山藩医であった宇田川家三代(玄随、玄随、榕菴)の墓所があり、「珈琲」の当て字を考案した榕菴の命日(6月22日)には法要の後、住民らがカップに注いだコーヒーを墓前に供えて手を合わせる。また、日本で初めて鉄道が開業(新橋―横浜間)した7年後の1879(明治12)年、日本人機関士に任命された一人、日下輝道(くさかてるみち)の墓所がある。

津山藩医の宇田川榕菴は、日本初となる植物学書と化学書を刊行。オランダ語を翻訳して、それまで日本に存在しなかった「細胞」「酸素」「還元」「圧力」など多くの学術用語を生み出した。

今年2月、現代和風建築で知られる建築家・出江寛が製作した黄金の茶室が、泰安寺の客殿の座敷に設置された。民間団体が企画した取り組み。茶室は移動式で幅約3m、奥行き2.5m、高さ2mの金属製。金網などを金メッキで仕上げてある。安田大智住職は「ぜひ多くの方に見学にきていただき、松平家の菩提寺である泰安寺のことをもっと知ってもらいたいです」と話す。(茶室見学は事前連絡が必要)

仏教を通じ地域の魅力を伝える
城西若僧会によるまち歩きツアー

江戸時代には22もの寺院が並んでいた城西地区。現在は17カ寺(重伝建地区には12カ寺)が残り、桃山時代から昭和まで各宗派各時代の建築様式を見ることができる。城西まちづくり協議会が製作した「城西おかげめぐりマップ」や、津山市観光協会発行の「お散歩マップ」を手にぶらり歩いてみるのもおすすめ。どの寺も手入れが行き届いていて、清々しい気持ちになる。

4月からは僧侶の案内で寺社を巡るまち歩きツアー「先達といくおかげめぐり」を開催している。ガイドを務めるのは若手僧侶たちで立ち上げた城西若僧(じゃくそう)会のメンバーだ。城西地区には6つの宗派の寺があるが、地域の活性化を図るため宗派を超えて結成。ガイドとともに作州民芸館か城西浪漫館を出発し、寺の外観や内観を見学。抹茶か写経・写仏、座禅・瞑想の中から一つ選んで体験できる。

まち歩きでは、寺の話だけではなく、まち並みの歴史やおすすめスポットなどガイドによってさまざまな話が飛び出すのも魅力。昨年度は県内外から278人が参加した。「非日常的な体験ができて面白かった」「地域の再発見になった」と評判は上々で、リピーター率も高いという。仏教や日本文化、歴史に触れる新たな学びの場にもなっているようだ。

(2023年4月取材)

先達といくおかげめぐり

城西エリアにある社寺をめぐるまち歩きツアー。
まち歩きにプラスして、抹茶コース、写経・写仏コース、坐禅・瞑想コースよりお好みのコースをセレクトできる。

詳細・お申し込み
http://josai-machidukuri.com/okagemeguri/
城西まちづくり協議会(城西浪漫館)TEL:0868-22-8688

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