牟佐大久保ひまわり畑
MAGAZINE あの駅この駅
列車で行こう。
まだ出会ったことのない岡山・備後へ。
【あの駅この駅】 津山線・牧山駅
大久保地区の潜水橋とひまわり畑
今回から新しく連載する「あの駅この駅」では、列車で訪れることのできる魅力ある場所、沿線のまだ広く知られていない地域の魅力を発信していきます。案内してくれるのは西日本旅客鉄道株式会社岡山支社企画課の田中祐貴さん。「新型コロナウイルス感染の影響でなかなか遠出ができない中、自宅から1~2時間で行ける範囲の旅行『マイクロツーリズム』で地元の魅力を再発見していただきたい。この時期にぴったりの企画だと考え、連載をスタートしました」。
今春、企画課へ配属になった田中さん。「関西出身なので、今まさに『岡山・備後』を勉強中。エリアの魅力を探すべく、実際に各地を巡り情報収集しているところです」とのこと。「どこを巡ってもそれぞれに魅力がいっぱい。自然豊かな風景や地元の方との温かい交流など毎回発見があり、その感動を伝えていけたら」と話します。
災害からの復興
地域を盛り上げるひまわり畑
第一弾はJR津山線の「牧山駅」。津山線は岡山駅から津山駅まで、岡山県の南北を結ぶ全長58.7㎞のローカル線。沿線には岡山三大河川の一つである一級河川「旭川」が流れ、穏やかな山村の風景が続きます。中でも牧山駅は山裾の小高いところにあり、旭川の清流を眼下に眺められるビューポイント。今回紹介するのは、その牧山駅から徒歩5分。旭川にかかる潜水橋を渡った先に広がる岡山市北区牟佐(むさ)大久保地区のひまわり畑です。
ひまわり畑を手掛けるのは、黄ニラ栽培をしている山本浩貴さん。ひまわりを植え始めたのは2019年のこと。2018年7月の西日本豪雨で、この辺り一帯は旭川の水があふれ出し高さ約4mまで浸水しました。牟佐地区特産の黄ニラが植えられた畑をはじめ、周囲の農業倉庫も屋根まで浸かったといいます。「ひまわりは荒れた土地の発芽テストや、土壌回復のための緑肥として試験的に植えたものでした」と山本さん。
1年目は一人で約10aの畑に種をまきました。その反響は予想外に大きく、2年目には地元町内会の協力を得ながら耕作放棄地も活用し、植え付け面積を5倍に。約10万本の色鮮やかなひまわりが満開になったそうです。その様子はSNSや口コミで話題となり、畑には近くを走る列車とひまわりをカメラに収めようと写真愛好家が多く訪れました。「元々は土壌改良につながればと始めた取り組みですが、地域の皆さんのおかげで大勢の方が訪れてくださり、地域の新しい魅力にもつながっていきました。今後は種まき体験など外部から来られる方も一緒になって盛り上がっていけたらいいなと考えています」。
懐かしさを感じる
日本の原風景
「岡山駅から20分で着く牧山駅。坂を下りて、潜水橋(せんすいきょう)を渡るとちょっとした小旅行気分を味わえますよ」と教えてくれた田中さん。4月に現地を訪れて山本さんから話を聞き、何度も畑に足を運んでひまわりの成長を見守ってきました。昭和53年(1978)に完成した潜水橋は読んで字のごとく、水かさが増した時には橋そのものが水面下に沈んでしまう橋。増水時は流木が引っ掛からないよう地域の人が欄干を外しているのだとか。大久保地区で生まれ育った山本さんは小学生から中学生までの9年間、その潜水橋を渡り電車で学校へ通っていたそうです。「ひまわり畑に来られた皆さんにも、観光スポットの一つとして潜水橋をぜひ渡ってほしいですね」と話します。
3年目の取り組みとなるひまわり畑。今年は農地を80aに広げ、15万本のひまわりが咲き誇ります。「現地まで迷わず到着できるようにのぼりや案内板を掲示しました。週末には農産物や飲食物の出店も予定しています」。
目の前に広がる青空と緑の山々。トンボが飛び交い、鳥のさえずりが響くのどかな景色。「夏休みにおばあちゃんの家へ遊びに来たときみたいな、懐かしい風景に出会えます」と田中さん。まっすぐ太陽に向かって大きな花を咲かせるひまわりは、見ているだけで元気とパワーをもらえそう。取材日は7月中旬、満開のひまわり畑に出会えるのはまさにこれから。
(2021年7月)
- 場所
- 津山線 牧山駅 牟佐大久保ひまわり畑
- 見ごろ期間
- 7月中旬~8月中旬(天候により前後する可能性あり)
- 注意事項
- 牧山駅には駐車場はございません。お越しの際はJRをご利用ください。
津山線 法界院~津山間は交通系ICカードがご利用いただけません。
あらかじめ切符をご購入の上ご乗車ください。
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