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OKAYAMA

MAGAZINE ふるさと図鑑

内山工業 株式会社

コルクレザーグッズ|内山工業 株式会社

サスティナブルな天然素材
コルクを暮らしの中へ

ワインの栓として使われるコルクは、コルク樫という木の皮から作られている。樹皮を剥がして採取するので木を伐採する必要がなく、その後9年ほどで自然再生し、新たな素材として成長する。コルク樫の樹齢は200年といわれ、1本の木から約16回の採取が可能。また、樹皮を剥がされたコルク樫は樹木を守るため、一般の木の数倍もの二酸化炭素を吸収する。コルクは、森を守りながら生産し続けられる、人にも地球にも優しいエコロジー素材だ。岡山市の老舗コルクメーカー「内山工業」では、コルクを薄くスライスして加工した「コルクレザー」のグッズを開発。コルクの新しい可能性を求め、その魅力を全国へ発信している。

コルク栓の製造からスタート

温暖で雨が少なく、空気の乾燥した地中海沿岸に生育するコルク樫。日本に入ってきたのは幕末から明治初期。点眼薬の瓶を密閉する蓋として使われたという。明治維新後、国産ガラスの製造が始まり、コルク工業の発展へつながっていく。当時は原料を輸入に頼る一方で、日本でも多く生育しているアベマキの樹皮を代用するアイデアが広がっていった。

アベマキが一番多く生育していた中国地方でコルク工業が盛んとなり、明治31(1898)年「内山コロップ製造処」を創設し、コルク栓の製造を開始。以来、ビール王冠のパッキン材や圧搾コルクの製造、ワイン栓の開発のほか、時代の変化に合わせて自動車のガスケット・シール材や、住宅用の断熱材・建材などを開発、製造している。

敷地内にある応接兼展示室

内側にコルク材を用いた飲料ボトルの王冠

室内の壁や天井、床などあらゆるところにコルク材を使用している

ソファの肘掛け部分にも手触りのよいコルクレザーを使用

多面的な機能を持つ
天然素材コルク

岡山市中区江並。児島湾へと注ぐ穏やかな流れの旭川沿いに、内山工業の岡山第一工場がある。「コルクは驚くほど優れた特徴を持った天然素材です」と教えてくれたのは岡山第一工場長の平賀一正さん。一番大きな特徴は、無数の独立した細胞から出来ていること。一つの細胞がハチの巣のようなハニカム構造になっていて、その数は1㎤当たり2~4千万個。「しかも一つひとつが空気を含んでいる。これがいろんな特性を生み出します」。軽く持ち運びやすい、水を通さず腐りにくい、音や振動を吸収する、滑りにくい、断熱性があるなど多面的な機能を持つコルクは、自動車やロケットの部品、草履、釣り竿のグリップなど幅広い分野で使われている。

「コルクは捨てるところがありません」と平賀さん。樹皮からコルク栓を打ち抜いた後の端材は粉砕して成形加工され、コルクマットやフローリング材、断熱材などに使われる。コルク樫の木の葉は家畜飼料や天然肥料に、果実のどんぐりは家畜飼料や食用油の原料に、刈り取られた木は薪や炭の燃料に活用できるため、最後まで捨てるところがないのだ。

選別されたコルク粒。軟らかいものはコルク栓などへ成形され、硬いものは土木資材として活用される。

いいものを追求する
ものづくりの姿勢

岡山第一工場では、品質の良いポルトガル産コルクを輸入し、特殊な製法で成型する圧搾コルク栓やコルクシートの製造を行っている。コルク粒は圧縮された状態で運ばれ、専用設備で良質なもののみを選別。「コルクの軟らかさによって比重が違うんです。良質な部分は軟らかくて軽く白い、硬い部分は重くて黒いです」。選別されたコルク粒は洗浄し、大きさや品質を均一にして接着剤を混ぜ、コルクブロックやコルク栓に成形していく。

昭和8(1933)年に建設された岡山第一工場は、一部レンガ造りも残っている。「2階の床が傾斜しているのは昔の名残です。船で運ばれてきたコルク原料を旭川の岸から橋を渡し、直接工場へ引っ張り上げていました」。工場には会社の歴史が刻まれている。

コルクブロックをシート状にする作業を「漉き割り」という。用途によって1~10㎜の厚さにスライスしていく。「コルクは摩擦係数が高いのでスパッとは切れません。鈍角の刃で上下を断ち切っていくイメージですね」。コルク粒の大きさによって刃先の形状や角度を替えて作業するが、コルクは天然素材なので気温や湿度によっても微妙に状態が変化するという。漉き割りを担当して20年になる別府正昭さんは、「コルクは冷えると硬くなるので、夏の方が作業しやすいです。刃先の微妙な角度ははっきり数値に表せるものではなく、経験値によるところが大きい」と話す。

内山工業は従来から製造していた圧搾コルク栓の製法を見直し、2011年に新製法を開発した。ワインボトルの密着性が高まっただけではなく、栓の柔軟性が増し、開栓時も軽い力でしなやかに抜くことができるようになった。2013年「ものづくり日本大賞」中国経済産業局長賞にも選ばれており、大手飲料メーカーへ提供している。伝統製品にも新たな考え方や技術を取り入れ、さらに改良を追求するものづくりの姿勢は、創業時から受け継がれている。

自社で設計した専用の生産設備で圧搾コルク栓を製造。現在はコルク栓製造で日本一のシェアを持ち、大手飲料メーカーに約20種類のコルク栓を出荷している。

コルクの新しい可能性を伝える

コルクとともに歩んできた内山工業は、2011年からコルクレザーを使ったグッズの製造販売をスタート。それまでの商品開発は企業向けのものが多かったが、「地球環境を考える上で、サスティナブルな素材であるコルクの魅力を多くの人に伝えたい」と、経営企画室の小林正和さんは言う。ナチュラルな温もりのある質感や耐水性の高さを生かした財布や名刺入れ、軽くて落としても怪我の心配がないコルク製の積み木は、哺乳瓶と同じ安全基準をクリアしているため、万が一なめたり食べたりしても安心だ。

「天然素材なので1点ずつ柄が違います。軽くて雨に強いし、地球にも優しいところがコルクの魅力」と話す小林正和さん

工場長の平賀さん、経営企画室の3人が持っていた名刺入れ。

使い込み経年変化が愛おしい名刺入れ。使うごとに軟らかくなり、味わいと愛着が増す。

コルクレザーと環境に配慮した素材とを組み合わせたバッグなどの服飾雑貨も続々と生みだされている。タマネギの皮から抽出した成分をベースに配合した合成繊維を使ったバッグは、カラフルで味わいのある色合いが女性に好まれている。また、コルクレザーそのものに色付けを行うため、ジーンズの染色を行っている企業に協力を依頼し共同開発したシートが「無排水染色」のコルクレザーだ。「コルクは水をはじいてしまうので普通の染色ができません。試行錯誤の末、コルクレザーに染料をミスト状に吹きかけて染色しています」。染色工程の排水は河川や海を汚し社会問題になっているところもあるが、1点ずつ手で染めているので排水は出ないという。

「工場で出るB級品や削りカスを再利用し、内山工業らしい個性あるものを作りたい」と三宅梨沙さん

廃棄される野菜などで染めた生地を使ったやさしい色合いのポーチ

「工場で製造したコルクブロックをどうにか加工できないかなと思案中です。
会社には大きな研究部門があるので、知恵をお借りしながら実現したい」と遠藤美奈子さん

環境に配慮した「無排水染色」のコルクレザー

開発を手掛ける経営企画室の3人は、「今後はインテリアなど暮らしに関わるアイテムにも取り組み、コルクの良さを体感してもらいたい」と意欲的。カタログには、“コルクがあるから、100+1%の楽しみが生まれるかも”と綴ってある。日々の暮らしで受け取る喜びの一歩先、コルクを通じた驚きや発見の喜び。柔軟性に富んだ新しいコルクの可能性に注目したい。

(2021年3月取材)

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