MAGAZINE 人・もの・こと
宇野駅リニューアル
玉野市商工観光課 内田大貴
西日本旅客鉄道株式会社 岡山支社営業課 森下吉行
宇野駅リニューアル|玉野市商工観光課 内田大貴 × JR西日本 岡山支社 営業課 森下吉行
海、山、アートを満喫
宇野駅から始まる瀬戸内の旅
ふるさとおこしプロジェクトでは「人・もの・こと」が繋がって生まれる新しいストーリーをご紹介しています。今回は2020年6月にリニューアル工事が完了したJR宇野駅を訪れ、新しくなった宇野駅の見どころや玉野市周辺の旅の楽しみ方を伺いました。
7カ国語の言葉でおもてなし
岡山駅から玉野市を結ぶ「宇野みなと線」の終着駅である宇野駅。電車から降り改札口へ向かって歩き始めると、まず目に入ってきたのが、出入り口の頭上に映し出されるプロジェクションマッピング映像。「宇野駅に到着されたお客様を、7カ国語の『ようこそ』という言葉でおもてなしいたします」と話すのは、宇野駅のリニューアル工事に携わった西日本旅客鉄道株式会社 岡山支社営業課・森下吉行さんです。
宇野駅は1910年(明治43年)に設置され、本州から四国への移動手段であった宇高連絡船の接続駅としてにぎわいました。1988年(昭和63年)、瀬戸大橋の開通で四国の連絡口としての使命を終え、1994年(平成6年)に現在の駅舎へ移転。近年は、アート作品が点在する直島などの島々や、3年ごとに開催されるアートイベント「瀬戸内国際芸術祭」へ訪れる世界中の観光客でにぎわっています。
「宇野駅にはアート鑑賞を目的に国内外から多くのお客様が来られます。海外の方にも不自由なく使っていただけるよう改良を進めてきました」。昨年春に交通系ICカードの使用が始まり、9月にトイレの洋式化や多機能型トイレの改良、今年3月には待合室の新設工事が行われました。
駅の改札に立っていると駅構内の施設や近隣情報について尋ねられることが多く、「限られたスペースの中で何をどう配置したらより便利に、旅を楽しんでいただけるか、随所に工夫を施しました」。トイレの案内表示板を視界に入りやすい位置に付けたり、コインロッカーの数や種類を増やし利用しやすい場所に設置したり。改札内に新設されたガラス張りの待合室は空調設備が完備され、年間を通じて快適に過ごせます。「待合室を透明なガラス張りにしたのは、宇野ののんびりした風景や空気感を味わって、ゆったりとした気持ちで過ごしていただきたいと思ったからです」。
“旅の始まり”を高める情報を発信
「鉄道業務はお客様を安全にお運びするだけではなく、気持ちよく出かけて帰っていただけるサービスをご提供しなければいけないと思っています。駅は入口であり出口でもあるわけで、普段利用してくださるお客様には自分の場所に帰ってきたなぁと安心していただけるように、旅行で初めて来られるお客様には不便なく安心してご利用いただけるように。また、宇野駅を“旅の始まり”の場として、旅行気分を高めるお手伝いができればと考えました」。
今回のリニューアルで注目したいのが、縦3.4メートル、横5.8メートルのスクリーンに映し出されるおもてなし映像。女子旅をテーマに、直島や小豆島などの瀬戸内の島々、玉野市のアートやグルメ、観光スポットが約4分間の映像で紹介されています。「宇野駅に到着して旅の始まりに見ていただくのもいいですし、旅を満喫した後、映像を見ながら思い出に浸ってもらえたら嬉しいですね」。映像は随時、更新されていく予定だそうです。
昨年4月にリニューアルオープンした玉野観光案内所「TAMANO Tourist Information Center」では、英語やフランス語など外国語に対応できるスタッフが常駐し、宇野港や直島、豊島へのフェリー時刻の案内や観光案内を行います。ショップを案内してくれたのは玉野市商工観光課・内田大貴さん。「玉野市で水揚げされた玉野えびやあなごを使ったお弁当(要予約)、玉野市胸上(むねあげ)地区で養殖された海苔、玉野レモンを使ったお菓子など、地元の特産品を中心に瀬戸内エリアでしか買えないものを取り扱っています。コーヒースタンドもあり、瀬戸内産レモンを使用したレモンスカッシュなどのメニューもあります」。
宇野駅をにぎわいある場所へ
「宇野駅をにぎわいのある場所にしていきたい」と話す内田さん。駅の入り口近くには、誰でも自由に演奏することができるストリートピアノが置いてありました。マスキングテープ(提供:カモ井加工紙株式会社)でカラフルに装飾してある電子ピアノは、玉野市が2020年1月に設置したもの。玉野市内の幼稚園で長年使われてきたピアノだそうです。
デザインされた大きな虹には、「宇野駅でのピアノ演奏が、世界からの観光客と市民をつなぐ架け橋になるように」との想いが込められているとか。旅の途中の外国人観光客や電車を待つ高校生など、さまざまな人が楽しんで弾いていくそうです。「習ったことはないんですが、小さい頃に姉が弾くのを隣で見て少しだけ…」と、内田さんが即興で演奏。駅を行き交う人が立ち止まり、辺りの空気が一瞬で和やかになりました。
風を感じながら巡る瀬戸内の旅
玉野市で生まれ育った内田さんは、地元の魅力をこう語ります。「宇野駅から出ると、穏やかな瀬戸内海と島々を見渡せるのどかな景色が広がります。爽やかな風を感じながら、アート作品を自転車で巡るのも気持ちいいですし、築港商店街をぶらりと歩くのもおすすめです」。以前はシャッターが閉まっている店も多かったそうですが、瀬戸内国際芸術祭を機に県外からの移住者が増え、活気が戻ってきたとのこと。「カフェや雑貨店、パン屋など新しいお店が増えています。新鮮な魚介を使った食堂や、素材にこだわった和菓子屋など昔ながらの名店もありますよ」。
また、海ばかりではなく、緑豊かな山が近いことも魅力の一つ。巨大な岩が重なり合い、「日本のボルダリングの原点・聖地」とも呼ばれている王子が岳は、眼下に瀬戸内海の大パノラマが広がる絶景スポット。隣接する渋川海岸は「日本の渚百選」にも選ばれている海岸で、ヨットやウィンドサーフィンなどのマリンスポーツが1年を通じて楽しめます。「宇野港周辺では来年に向けて宿泊施設の建設が始まりました。今後は瀬戸内観光の拠点として、長く滞在しながら観光やレジャーを楽しむことができます」。
瀬戸内エリアを巡る観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」は8月1日から運行を再開します。宇野駅に降り立ち、きらめく自然やアート、まだ知らなかった瀬戸内の魅力を探す旅に出かけたい。
(2020年7月)
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