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ふるさと文庫

#14

ふるさと文庫

BOOKS

『重森三玲 庭を見る心得』

重森三玲 著 平凡社 刊

「その石が、常に私に話しかけてくるのです」作庭家・庭園史研究家の重森三玲(1896~1975)は言います。京都・東福寺の北斗七星をモチーフに配置された石の円柱、苔と石が市松模様の庭で、その名をご存知の方も多いでしょう。

岡山県上房郡賀陽町(現在の吉備中央町)に生まれた重森三玲は、日本美術学校で日本画を学び、独学で造園・庭園学を修めます。1934年、室戸台風で京都の庭園が荒廃したことに危機感を抱いた重森三玲は、3年をかけて日本全国の庭園を実測調査し、約300の庭の調査記録を『日本庭園史図鑑』全26巻にまとめました。その膨大な作業から得た知識、華道や茶道への深い造詣から、独特のセンスを持つ枯山水の庭園を各地に残しています。

そんな重森三玲の言葉は、鋭く、誠実。

「年百年中、毎日楽しいのだから、私ほど幸福な人間はこの世の中にないとさえ考えている。全く文字通り日々是好日なのである。金銭的には貧乏のし通しだが、それが、またこの上もない楽しいことである。従って心の中は千万長者以上だから、世の千万長者の生活が気の毒千万にさえ思えてならない。」

「一個の石の最高に美しい姿が把握出来るまでは、その石に手をかけてはならない。その石と作者との呼吸が合致した時に、石は自ら動くのであり、作者も亦石の命のままに、最高の美を表現してやれるのである。」

「庭園の鑑賞者は、決して今日の人々のみではありません。永遠の人々が鑑賞してくれるのですから、そこに永遠の今日が生きていなければならぬはずです。」

刻々と変化する庭。季節のうつろいはもちろん、一日の中でも、朝、昼、夕方とでは異なる様相を見せます。晴れの日と雨の日、雪の日、天候によっても、日差しの強さによっても、その趣は異なります。一羽の小鳥が飛び来て鳴く、それとても作庭家の想像を超えた、庭のひとつの風景。庭は「生きている生物的存在」であり「生きている芸術」と、重森三玲が語るゆえんです。

「人間が生活する限りにおいて、あらゆる面で自然を基本としなければならない。自然は時によっては悪魔であり荒神であるが、常には崇敬と愛顧の対象である。必然的に自然を恐れ必然的に自然を畏敬する。…(中略)自然の美は同時に神の世界であり、神の創作した美の世界であるから、その世界を冒すことは絶対に許されないのである。」

大いなる存在を感じながら、庭と向き合い続けた重森三玲。岡山県吉備中央町にある「重森三玲記念館」では、その活動の軌跡をたどることができます。庭園は、瞬間にのみ見える美。旅先での庭園と、これからどんな出逢いがあるでしょう。

選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき

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