OKAYAMA
MAGAZINE ふるさと図鑑
フレッシュタルトのお店 STYLE
岡山フルーツみにたると|フレッシュタルトのお店 STYLE
美味しさの追及から生まれた
みんなが笑顔になるミニタルト
岡山市・問屋町テラスの一角にあるフレッシュタルトの専門店「STYLE(スタイル)」のミニタルトは、サクッとした軽いタルト生地が特長。搾りたての蒜山ジャージー牛乳と質の良いバニラビーンズを組み合わせたこだわりのクリームが、旬のフルーツの味を引き立てる。色鮮やかで愛らしい、五感で楽しめるスイーツは、パーティーや手土産などさまざまなシーンで喜ばれている。
岡山県産のフルーツを、愛らしいスイーツに仕立てる
いろとりどりの見た目も楽しいミニタルトがずらりと並ぶショーケース。フレッシュタルトの専門店「STYLE」のミニタルトは、直径4.7㎝の一口サイズながら一つひとつが華やかで美しい。トッピングには白桃やシャインマスカット、ピオーネ、足守メロン、早雲蜜芋など旬の食材を使用。店頭には約15種類が並び、季節によって入れ替わる。
温暖な気候で育つ岡山県産のフルーツなどを取り入れ、新メニューの開発を手掛けるのはオーナーの三宅昭士さん。「まずは食べておいしいもの、契約農家の方とのやりとりでひらめいたものを、すぐカタチにしてスタッフや家族に試食してもらいます」。
例えば、白桃(親)と早摘みした若桃(子)を一緒にトッピングした「親子もも」。白桃は栄養を集めて大きな実をつくるため、数回の摘果作業を行なう。「若桃は五月桃とも言われるんですけど、見た目は梅みたいな緑色。でも、味はしっかり桃なんです。間引いた桃がそのまま捨てられるのはもったいないので、シロップ漬けにして使ってみたら面白いなと思って」。“親子もも”というネーミングにすることで、白桃ができるまでのプロセスも伝わる。「フルーツ王国と呼ばれる岡山は果物をはじめ食材の宝庫です。旬の食材はもちろん、あまり知られていない食材もタルトを通じて伝えていきたい」と話す。
魅了された洋菓子の世界
三宅さんが洋菓子に興味をもったのは高校生のとき。当初は料理の道を目指していたが、バイト先の洋菓子店でその魅力に引き込まれた。「料理は素材の味を引き出して作るもの。食べると素材や調味料を想像することができるんですが、お菓子って粉と砂糖から作られていて、その工程がよく分からない。ふんわり泡立てた卵と粉からスポンジ生地ができたり、卵白だけでメレンゲになったり、同じ卵でもプリンに使えば固まるし。自分の知らない世界だったんです」。
大阪の専門学校で洋菓子を学び、その後、洋菓子店に入って修業。いつかは自分の店を持つという夢を抱きながら、帰岡後は会社員として働き、経営を切り盛りするマネジメント力を磨いた。現場から離れていた会社員時代のことを、「パティシエとしてはブランクになりますが、いろんなものから刺激を受け、世の中の傾向や流行を学んだ。その経験があったからこそ今の店の形にたどり着いたんだと思います」と振り返る。
一人ひとりに合ったスタイルで楽しめる洋菓子店
2015年12月、岡山市内に「STYLE」岡町本店がオープン。三宅さんが店名に込めた思いがある。「お客様一人ひとりのニーズ、スタイルに合った楽しみ方を提供したい。女性はもちろん、男性でも、小学生が一人でも気軽に入れるような、身近にスイーツを楽しんでもらえる店に」。
取り扱う商品は、生地や素材、クリームの組み合わせを変えることで多様に展開できる「タルト」に絞った。洋菓子店の多くは洋酒を使って香り付けをするが、「STYLE」では誰もが食べられるようアルコールを一切使っていない。また、店内に流すBGMはクラシック音楽ではなく、アップテンポなJ-POPに。開放的で親しみやすい雰囲気を大切に、誰もが身近に感じられる洋菓子店を目指した。
何個でも食べてもらえる美味しさを追求
タルトの美味しさはサクサクしたタルト生地と、上の部分のクリームやフルーツ、2つの食感を同時に楽しめること。「STYLE」のミニタルトは、ふんわり軽やかなのでいくつでも食べられると評判だ。「通常のタルトはダマンド生地(アーモンドクリーム)を使うんですが、美味しくてもいくつも食べるとどうしてももたれてしまうので、うちのタルトには使っていないんです。あと、タルト生地のサクサク感を保つために独自の製法でコーティングし、その上にジャージークリームをたっぷり詰めています」。濃厚でコクのあるジャージー牛乳から作られるクリームは、主役の味が引き立つようあっさりした甘さに工夫されている。
また、甘酸っぱいカシス&クランベリーや、完熟マンゴーといった個性ある素材を使う場合は、その魅力を最大限に引き出すオリジナルクリームを考案。「マンゴーは甘酸っぱいパッションフルーツ味のクリームを組み合わせると、その甘さがより引き立ちます。」。ジャージークリームとの2層にすると、さらに味に広がりが生まれる。マンゴーのミニタルトを頬張ると爽やかな風味が感じられ、南国の香りが口いっぱいに広がった。
フルーツのほかに抹茶や大福、きび団子など和菓子を取り入れたユニークなメニューも。「サクサクのタルト生地ともちもちした団子の食感、こしあん入りの大福とチョコレートクリームとの組み合わせ。ちょっと想像できないかもしれませんが、一口で食べてみると意外にぴたっときて美味しいんですよ」。固定概念にとらわれず、発想を楽しむことでほかにないものを生み出そうという“遊び心”が感じられる。ミニタルトの評判は口コミで広がり、JR西日本の観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」の車内販売にも登場している(要予約)。
食べたら笑顔になるミニタルトの魅力を発信
年齢や性別に関係なく、みんなが笑顔になれる店。自分のスタイルで楽しめるスイーツを――。その思いは店で働くスタッフにも注がれている。自身の経験から、飲食業の労働条件の緩和を強く願ってきた三宅さん。「働きやすい環境を整え、スタッフには楽しい気持ちで働いてもらいたい」と話す。
スタッフの冨田智津美さんは、友人にもらったミニタルトを食べて「STYLE」のファンになった一人。新メニューが出ると、必ず買って試食しているという。「いつも新しい発見があります。今の季節はシャインマスカットが美味しいです」。
ちなみに、問屋町テラス店ではオープン時から「生チョコ」が一番人気なのだとか。「贅沢な生チョコを1個から買えるスペシャル感があるので、自分のご褒美に買うお客様もたくさんいらっしゃいます。個人的なおすすめはレアチーズ。おいしいですよ」。
宝石のような輝きの中に、こだわりとアイデアが詰まっている「STYLE」のミニタルト。今しか楽しめない味を求めて足を運んでみたい。
(2019年9月取材)
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