ふるさとおこしプロジェクト

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MAGAZINE

ふるさと文庫

#11

ふるさと文庫

BOOKS

『日本発酵紀行』

小倉ヒラク 著 D&DEPARTMENT PROJECT 刊

「どこもかしこもコンクリートで固められ、信仰や祭りが消え去り、通りの風景が均質化してしまったように見える」現代の日本。しかし、視点の置き所を変えてみると、豊かな景色と文化がまだ残っています。

「発酵文化」を切り口に、冴えた眼で日本各地に生きる人々の営みを見出し、私たちにその記憶を伝える発酵デザイナー・小倉ヒラクさん。本書は、著者自らが47都道府県の発酵文化を訪ねた旅行記。各都道府県ごとにひとつの発酵食品をピックアップし、その製造の現場へ足を運んだ記録です。

ピックアップの基準は3つ。
・発酵食品の種類がかぶらないこと
・ルーツに忠実なこと
・景色と人にフォーカスすること

選び抜かれた47の発酵食品を線でつないでみると、地域の特性が浮かび上がってきます。「魚と酢の通り道 瀬戸内の旅」と題された本書・第3章を紐解くと、点と点がつながって、新たな景色が立ち上ってくる醍醐味を味わえます。著者の瀬戸内の旅の出発点は…!?

「温暖な瀬戸内海に面した土地は1年を通して魚と近い場所。だから生魚本来のフレッシュッさをキープしつつ、適度に保存性をもたせた酢漬けの文化が発達したんだね。瀬戸内海の魚食文化を育んだ発酵調味料、酢。近世までその生産を支えていたのが、『海運都市』尾道だ」

創業400年超、現在も尾道の街で酢を作り続ける「尾道造酢」。酢という発酵食品を探っていくと、尾道という街の歴史、北前船を通じての当時のロジスティックスの話など、魅力的な物語が広がります。

尾道から瀬戸内海沿いを東に100㎞ほど進むと、日生(ひなせ)町にたどり着きます。岡山の古い港町・日生では、瀬戸内の酢漬け文化「ママかりずし」を堪能しながら、海とともに生きてきた人々の暮らしと知恵が紹介されます。瀬戸内の旅は、さらに鳥取・智頭の柿の葉ずし、愛媛・五色浜のいずみやへと続いていきます。

「僕が目の当たりにしてきたのは、どんな状況においてもよりよく生きようとする人々の意志。その意志の強さ、しなやかさ、多様さだったのだ」と著者は言います。発酵文化は、土地の記憶を宿し、風土を体現する「ローカリティの拠り所」、それは私たちの「希望の拠り所」でもあります。本書を読んで旅に出ると、さて、どんな瀬戸内の風景が見えてくるでしょう。

選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき

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