ふるさとおこしプロジェクト

MENU
×

MAGAZINE 人・もの・こと

SETOUCHI TRAIN

鈴木マサル(テキスタイルデザイナー)
吉井彰浩(JR西日本 岡山支社 ふるさとおこし本部長)
辻 信行(暮らしき編集部)

SETOUCHI TRAIN | 鈴木マサル × JR西日本 岡山支社 吉井彰浩 × 暮らしき編集部 辻信行

せとうちがもっと好きになる
デザインの力で魅力を発信

ふるさとおこしプロジェクトでは「人・もの・こと」が繋がって生まれる新しいストーリーをご紹介しています。第2回は「SETOUCHI TRAIN」にまつわるスペシャルインタビュー。ラッピングデザインを手がけた鈴木マサルさん、JR西日本岡山支社 ふるさとおこし本部長 吉井 彰浩さん、そして、ふるさとおこしプロジェクトのパートナーである暮らしき編集部の辻 信行さんにお話しをお聞きしました。

profile

  • 鈴木 マサル(すずきまさる)

    1968年千葉県出身。多摩美術大学染織デザイン科卒。粟辻博デザイン室勤務後、1995年独立、2002年有限会社ウンピアット設立。2004年からファブリックブランド OTTAIPNU(オッタイピイヌ)を主宰。自身のブランドの他に、2010年よりフィンランドの老舗ブランドであるマリメッコや、ムーミンのデザインなど国内外の様々なメーカー、ブランドのデザインを手がけている。東京造形大学教授、有限会社ウンピアット取締役。

  • 吉井 彰浩(よしい あきひろ)

    1976年山口県下関市出身。横浜国立大学経済学部卒。1998年、西日本旅客鉄道株式会社入社。広島、大阪等での勤務を経て、2014年尾道駅長。2016年より岡山支社ふるさとおこし本部長として、岡山・備後エリアの『ふるさとおこしプロジェクト』に取り組んでいる。

  • 辻 信行(つじ のぶゆき)

    1967年岡山県倉敷市出身。京都教育大学卒。小学校講師等を経て1995年独立、有限会社くま設立。2010年まで倉敷ケーブルテレビで人気番組を企画・出演。古民家をリノベーションしたカフェや菓子工房の運営を手がけるなど、地域の宝を次世代に残す活動に取り組んでいる。倉敷芸術科学大学非常勤講師、倉敷生活デザインマーケット「林源十郎商店」プロデューサー、「三宅商店」店主。

瀬戸内海のおだやかな海と多島美を外装にあしらったラッピング列車 「SETOUCHI TRAIN(せとうちトレイン)」が、2019年3月13日から運行をスタートしました。「SETOUCHI TRAIN」は、可愛らしいラッピングで沿線を盛り上げるだけでなく、列車内でも情報発信スペースを活用し、せとうちの魅力を発信。地域に点在する「いいもの」の紹介をはじめ、観光情報など地域に密着した情報発信を行っています。

SETOUCHI TRAIN ギャラリーはこちら >

せとうちの魅力をラッピング列車で発信

鈴木さんに「SETOUCHI TRAIN」のデザインについて伺います。ブルーを基調に瀬戸内の島々と白い電車が描かれている列車。夢のあるデザインはどのように生まれたのでしょう?

鈴木マサル(以下鈴木) 瀬戸内のいろんなところを案内していただきまして、その時に海に浮かぶ島、小さな山みたいな島がぽこぽこっと浮かんでいるのが印象的で、穏やかな海の中を電車が進んでいくようなイメージを形にしてみました。

島がいくつも浮かんでいる海というのは珍しい光景ですか?

鈴木 この場所に住んでいる皆さんからすると、日常過ぎて気が付かないのかもしれないですけど、心が躍るような、素晴らしい景色だと思います。

辻 信行(以下辻) 「SETOUCHI TRAIN」はどの路線を走るんですか?

吉井彰浩(以下吉井) 観光列車ではなく在来線列車なので、一般のお客さまの通学や通勤の途中に利用していただけます。運行区間は岡山を中心として東は姫路、西は三原。北に上がると倉敷から伯備線で新見まで。南に下りると瀬戸大橋線の児島まで。宇野みなと線、赤穂線、福塩線など、期間は2022年3月ごろまでの予定です。

鈴木 普通に走る列車というのが嬉しいですね。それに乗ることを目指したわけでもなく、ホームで待っていて、たまたま乗り合わせたら「SETOUCHI TRAIN」だったというのが。

たまたま乗れると嬉しい気持ちになりますね。子どもも喜びそうです。どこを走るかは事前には分からないんですか?

吉井 シフトは組むんですけど、状況によって変わってくるのでギリギリまで分かりません。それが楽しみでもありますね。「新幹線のお医者さん」として運行しているドクターイエローのように、「SETOUCHI TRAIN」を探せ(笑)、と楽しんでいただけたら嬉しいです。

 今年は「瀬戸内国際芸術祭2019」が開催されます。岡山に来て島を巡るなかで、タイミングよく「SETOUCHI TRAIN」に乗ることができたら嬉しいですね。列車を見て、写真を撮って、SNSにアップする人も多いんじゃないでしょうか。

吉井 列車が走るエリアにはいろんな撮影スポットがあります。春だったら田んぼと菜の花、それから桜。

鈴木 夏は海が似合いそうですね。列車が自然の中の一部として写り込んだら素敵だなと思います。

広島県の南東部に位置する尾道は、大林宣彦監督の「尾道三部作」の映画のロケ地としても有名。多くの人を魅了してきた歴史と景観は「日本遺産」としても登録されている。「尾道水道」に面した線路を走る「SETOUCHI TRAIN」

 吉井さんはどこが絵になると思われますか?

吉井 尾道でしょうか。浄土寺山を上がると、海岸線を縫うように走っていく列車を見ることができます。穴場スポットなんです。

鈴木 尾道といえば、映画の大林宣彦監督の世界ですね。夕暮れ時に行った時、その世界観が本当にあのまま目の前に広がっていてびっくりしました。

吉井 尾道は住んでいる場所が海と山の間になっていて、坂道の街ですね。最近は移住者が多く、街がどんどん元気になっています。今春、駅舎をリニューアルしたんですが、雰囲気は旧駅舎創業当時の懐かしい感じのままです。

鉄道がつないで、広がっていく魅力

 マサルさんのデザインはテーマにしているものが動物だったり自然だったり、世代や国に関係なく、親しみやすさがあります。僕らはモノに目がいきがちなんですが、モノじゃなくて、みんなが共感できるデザインで街を元気に、自分の地域を誇れるようなきっかけ作りができたらいいなと考えていました。

JR西日本岡山支社のふるさとおこしプロジェクトでは、岡山駅構内おみやげ店舗のショッピングバッグや「JR PREMIUM SELECT岡山のおいしいおやつ・おつまみシリーズ」のパッケージなどのデザインも鈴木さんが手掛けられていますね。

吉井 2017年からふるさとおこしプロジェクトのパートナーということで「暮らしき編集部」の辻さんに参加していただき、第一弾としてショッピングバッグを作りました。

岡山駅ナカ「おみやげ街道」で使われている、お土産を渡す人も、受け取った人も嬉しい、鈴木マサルさんによる桃太郎柄のショッピングバッグ。持ち手部分の色もサイズによって異なるカラーを採用し、レジで瞬時にサイズを見分けることができる工夫も兼ねている。

 岡山らしくということで桃太郎をモチーフにした紙袋で、色もサイズによって5種類あります。持って歩くのも受け取るのも嬉しくなるようなショッピングバッグができました。完成した後、マサルさんが「東京で見かけました」と写真を送ってくれて。

鈴木 そうなんです。渋谷のコーヒーショップで見かけたのが嬉しくて(笑)

それは嬉しいですね。桃太郎の紙袋を渋谷で見るという(笑)

鈴木 男性の方で、ピンク色の紙袋だったので、自分が持つのは恥ずかしかったかもしれませんが、家に持ち帰ったとき「いいね、これ」とか、親子の会話が生まれたらいいなぁと(笑)。そういうきっかけになるとうれしいですね。

吉井 おかげさまでショッピングバッグは皆さまにご好評で、東京や大阪、福岡など全国で見かけるようになりました。お客さまを媒体にして広がっていくのが鉄道の力。今はもっと早く広がっていく手段もありますが、こういうアナログな形もいいなと再認識しました。

地域の宝を再発見し、街を元気に

ラッピング列車や紙袋、色んなものが生まれていますが、これらは「ふるさとおこしプロジェクト」の活動の中のひとつになるんですよね。

吉井 「ふるさとおこしプロジェクト」は2015年3月にスタートした、ここにしかない「いいもの」を見つけ出して、さまざまな活動を通して岡山・備後、そしてせとうち瀬戸内の魅力を全国に発信するプロジェクトです。なぜJRが?と聞かれることもあるんですけど、電車に乗っていただくのは地元にお住まいの方です。地元の魅力を発信し、外部から人を呼び込むことで街が元気になりますよね。地域を活性化する取り組みはJRの大切な仕事の一つだと考えています。

吉井 まずは地元の良さをもっと知ってもらって、発信していくこと。地元の「えぇとこ」「えぇもん」「うめぇもん」を見つけ出して認定する「ふるさとあっ晴れ認定委員会」を開催して昨年秋で11回目を迎えました。「SETOUCHI TRAIN」の車内では、広告スペースを活用して、認定品や地域に関連するイベント紹介していきます。駅に貼ってあるポスターは、なかなか足を止めて見ることは少ないですが、車内広告は通学や通勤途中の方にゆっくり見ていただけるんです。

「SETOUCHI TRAIN」の車内では、「せとうち」のいいものをテーマに開催した「第11回 ふるさとあっ晴れ認定」に選ばれた魅力的な場所や商品を紹介。

 地元にある「いいもの」を、普段のみんなの暮らしの中に置くことは大切ですよね。そこに、楽しいやかわいいや、おしゃれだったりが加わることで目に止めてもらえる、その役割を担ってくれているのがマサルさんのデザインで、思わず手に取ってしまったり、目についてしまう入り口を作ってくれるんですよね。

吉井 ラッピング電車は遠くから見てもインパクトがありますし、ショッピングバッグはお客さまが運んでくださいます。駅の中は人も多いですから、そこで発信することで皆さんに興味を持っていただけます。

地元の企業や生産者と一緒に、地域素材をつかった商品なども開発されていますね。

吉井 岡山駅ショッピングバッグの桃太郎柄は、駅ナカ限定の「岡山のおいしいおやつ+おつまみ」シリーズのパッケージや、地元食材を使ったお弁当の風呂敷にもなりました。「SETOUCHI TRAIN」のラッピングになっている柄でもぜひ、瀬戸内地方ならではの素材とコラボして素敵なものができたら楽しいですね。

 岡山や瀬戸内には、職人の技術が生み出した帆布や国産ジーンズなど、誇れる素材はいろいろありますから。

鈴木 マスキングテープで有名なカモ井加工紙さんも倉敷でしたよね。マスキングテープは本当にどこでも大人気で、全国にファンがいますよね。

吉井 これからどんな展開ができるか、今いろいろと探っているところです(笑)。

鈴木 ショッピングバッグもそうなんですけど、白くても別に差し支えない、みたいなところにデザインが入っていくのがおもしろいですよね。おや?と思うところに、ローカルのものをテーマにした模様があったり。地元の方が使ってくださって、より地元が好きになる、誇れるようなものになっていくと素敵ですね。

 瀬戸内地方は昨年の西日本豪雨で大きな被害に遭いました。総社市の美袋駅(みなぎえき)という古い木造駅舎があるんですが、その辺りも腰のあたりまで水に浸かったんですね。線路のすぐそばに「まるみ麹本店」という味噌づくりをしている会社があり、災害にあったときに全国の皆さんに助けてもらったからその恩返しをしたいということで、駅前の広場で復興感謝イベントを開催するんです(イベントは2019年3月30日に終了しています)。そのイベントの象徴的なものとして、「SETOUCHI TRAIN」に伯備線(岡山~備中高梁)を走ってもらい、復興の後押しをしてもらいます。

吉井 沿線の皆さんが笑顔になる活動をこれからも続けていきたいですね。鈴木さんのデザインパワー、辻さんの知恵もお借りして、今後もせとうちエリアをもっと盛り上げていきたいと思います。今後もよろしくお願いします。

(2019年3月取材)

この記事をシェアする

  • facebook
  • Twitter
  • LINE

関連記事