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ふるさと文庫

#08

ふるさと文庫

BOOKS

『岡山の和菓子』

太郎良裕子 著 日本文教出版 刊

季節の情感を細やかに伝える和菓子は、土地の歴史や風土と密接につながっています。日本の和菓子の歴史をひもとくと、弥生時代は木の実や果物を菓子としていました。奈良時代には「唐菓子(からくだもの)」と呼ばれる米・麦・大豆などの穀粉を使った菓子が、大陸から伝わったとされています。

和菓子が大きく変わるきっかけとなったのは、茶の湯の流行でした。茶が庶民にまで広まったのは、鎌倉時代に備中(岡山県)出身の栄西禅師が伝えた、宗の国の喫茶法によるもの。その後、茶の文化は安土桃山時代の千利休によって極められ、客を茶でもてなす習慣が支配階級に根づいていきます。茶道が岡山に入ったのは、岡山藩四代目藩主・池田綱政の頃。諸国の大名が競い合うように、茶会に粋な菓子を用意することに心血を注いだと言われる時代です。岡山の代名詞のようなイメージすらある吉備団子も、池田藩の家老のすすめで、古来からの黍団子を茶席用に求肥で作ったのがはじまりとか。

温暖な気候の岡山では、和菓子の材料も充実していました。中でも、備中小豆の品質の良さは日本一と言われ、江戸時代には高瀬舟で河川、さらには瀬戸内海沿岸を行き来し、四国の黒砂糖とも結びつき、岡山を代表するさまざまな銘菓を生み出します。

本書『岡山の和菓子』には、そんな和菓子の歴史や材料、道具などの説明と、岡山の伝統的な和菓子がていねいに紹介されています。特に「岡山の伝統的和菓子」については、ひとつひとつの和菓子店とその代表的な一品、その来歴を詳しく伝えます。食べたことのない和菓子にこころ惹かれ、背景までは知らなかった和菓子はまた食べたくなり…。各ページの和菓子の写真には、作り手の実直なことばが添えられていて、愛おしさはつのります。

「栄太郎が親孝行者ということで有名になって、よう売れたんよ」(栄太楼/岡山市)

「そもそもは饅頭じゃなくて、お餅だったらしくて」(藤戸饅頭本舗/倉敷市)

「いろいろなものが様変りしていくなか、手間がかかって面倒でも伝統的なものを守っていく」(みづゑ/岡山市)

「伝統はお客様が育ててくれるものです」(鶴聲庵/津山)

「お菓子ってそばにあると心が豊かになるでしょう。皆が幸せな気分になってくれるといいですね」(佐藤玉雲堂/矢掛町)

岡山のおいしい和菓子で、そろそろお茶にしましょうか。

選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき

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