ふるさとおこしプロジェクト

MENU
×

KURASHIKI

MAGAZINE ふるさと図鑑

株式会社 丸五

たびりら tabiRela | 株式会社 丸五

若い感性と熟練技、
地域コラボが生み出す「たびりら」

JR宇野みなと線に乗って岡山を出発。茶屋町駅に近づいたとき見えてくる白い煙突とのこぎり屋根の工場。大正8年に創業した「丸五」の本社工場だ。地下足袋の生産から始まり、安全スニーカーや作業用手袋など働く人の安全と安心を支える老舗メーカー。100年近く作り続けてきた「地下足袋」の新たな可能性を求め、2015年に新感覚シューズ「たびりら」を開発。全国にその魅力を発信している。

歴史あるのこぎり屋根の工場から
世界5大陸へ

ギザギザしたのこぎりの刃に似た三角屋根の工場。天井が高く、窓から太陽の光をふんだんに取り込む構造は、産業革命当時のイギリスで織物工場として考案されたもの。日本では明治時代から使われ始めたという。間近で見る木造りの壁は、遠くから見るよりずっと趣があり、その歴史の長さを物語っていた。

古くから綿の栽培が盛んだった倉敷市茶屋町は、繊維産業が発達し座敷足袋の生産が発展した。「丸五」は大正8(1919)年に創立。創業者の藤木伊太郎が人力車のタイヤを加工して足袋に縫い付けた「縫付式地下足袋」を考案し、地下足袋の一貫生産に乗り出した。マルの中に算用数字でシンプルに「5」と描かれた会社のマークには、「世界5大陸へ飛躍しよう」という願いが込められている。

昭和初期に開発を手掛けたゴム引作業手袋「万年軍手」はヒット商品となり、海外への進出も。戦時中には茶屋町駅から工場まで専用の線路が引き込まれ、地下足袋や万年軍手が連日全国に向けて発送されていたそうだ。現在、本社工場では地下足袋や自動車部品などが製造され、140人の社員が働いている。

働く人の足を守るメーカーとしての誇り

農業や土木業など働く人の足を守る地下足袋からスタートした丸五。時代のニーズに応じて、安全スニーカーや作業用シューズ、作業手袋など労働現場の安全を確保する商品づくりが続けられている。その要となるのが厳しい品質管理だ。

品質管理試験室では、日々さまざまな試験が行われている。例えば衝撃試験。粘土を足の指に見立て、決められた大きさに設定し靴の中にセットする。JIS(日本工業規格)では軽作業用、普通作業用、重作業用の3種類の区分があり、20㎏の重りを36cmの高さから落とし、足先に決められた空間が確保できていれば普通作業用として合格。衝撃や圧迫、足先の保護、靴底の滑り具合、ゴム底のはがれ具合など安全規定がこと細かに定められ、それらの試験を無事にクリアした靴だけが「安全スニーカー」と名乗れるのだ。

靴を切り刻み、はさんで引っ張る。ドンドン押し続ける。靴を10万回屈曲させて耐久性を確認する。100往復こすって生地の傷み具合をみる。理科の実験室にいるような感覚だ。試験装置は一目見ただけでは何をするのか想像もつかない。が、どれも時間を要する地道な作業だということは分かる。「安心して履いて頂くためには必要なことです。命にかかわる現場なので」と小谷翔さん。働く人の安全を守るメーカーとしての誇り、品質にこだわる丸五の精神は創業時から受け継がれている。

地下足袋の新しい可能性を求めて

日本では職人に根強く支持されてきた地下足袋だが、履き心地のよさやシンプルなフォルムがフランス人の目にとまり、ファッション性あるプロダクトが生まれた。2009年にヨーロッパで販売された「ASSABOOTS(アサブーツ)だ。足袋に留める時にひっかける金属製の留め具「コハゼ」や二股に分かれた独特のフォルムを活かし、カラフルな色や柄をほどこした地下足袋ブーツは、海外で人気を集めるように。

それでも、日本では地下足袋は作業用・祭り用というイメージが強く、特別な存在。「そんな地下足袋をもっと日常で使ってほしいと思ったんです。親指(母趾)を独立させた履物は、世界を探せばサンダルなどありますが、足袋のように二股で袋状になっている形は日本独自のもの。若い世代に地下足袋の文化や技術を伝えていきたい」。五代目になる藤木茂彦社長は、ヨーロッパ発祥のリゾートサンダル「エスパドリーユ」をヒントに、女性社員のやわらかな感性を信じて地下足袋シューズの開発を任せた。

「たびりら」商品開発時の思い出を語る川崎みのりさん、千田瞳さん、藤木茂彦社長。「たびりら」は通勤やオフィス、旅先やキャンプ場などさまざまな場面で活躍している。

若い感性と熟練技、
地域コラボが生み出す「たびりら」

2015年、地下足袋シューズ「たびりら」が生まれた。ネーミングの由来は、「足袋との旅でリラックス」。素足感覚で歩ける心地よさ。コンパクトに折り畳めるので持ち運びにも便利。安全スニーカーのメーカーだから品質、耐久性は折り紙付きだ。足の指で地面をつかみ、滑らない安心感がある。男性を中心に作られてきた地下足袋が女性用として生まれたことも新しい。今まで使ってきた足の金型は使えず、女性の足に合わせて新しいものを一から作り直したという。

この春までベテラン職人の元で鍛えられた吉田彩華里さんは7年目。今は2年目の縄田麻衣さんに教える立場だ。「感覚が大事なので言葉で伝えるのが難しい。経験を重ねて、体で覚えていく作業ですね」と吉田さん。1人あたり1日130足作れる。

「たびりら」の製造は手作業で行われる。裁断されたパーツを縫い合わせアッパー(足の甲を覆う部分)を作る。アッパーを金型に入れ、専用の道具で布をひっぱりインソール(中敷き)に貼り付けていく。この「吊り込み」と呼ばれる作業は、履き心地を左右する重要な工程の一つ。特に二股に分かれた指先の部分は熟練の技が必要だ。しわにならないよう力を込めてひっぱるが、ひっぱりすぎると模様がずれてしまう。生地によって力の入れ具合も変わってくる。左右のバランスをみながら、一つひとつ丁寧に作り上げていく。最後にアウトソール(靴底)を貼り付けて完成。

また、「たびりら」に使っている生地は倉敷帆布の老舗メーカー「タケヤリ」のもの。染め作業は倉敷市児島で手掛けている。倉敷にはものづくりの精神と技術を大切にしてきた土壌があり、いいものを作りたいという思いが結集し、新しいものづくりが広がっている。

創業から100年、働く人を「足元」から応援

正午を知らせるチャイムが鳴ると昼休みが始まる。木造の食堂に弁当を持ち寄って昼食タイム。食堂に入ると、華やかな足元に目を奪われた。「たびりら」や足袋型トレーニングシューズ「hitoe(ヒトエ)」、丸五で作っている安全スニーカーがにぎやかに並んでいる。聞けば社員それぞれ自分の仕事に合った丸五シューズを履いているとか。製造部門のメンバーは自分たちが作った地下足袋シューズ。藤木社長が履いていたのは「hitoe(ヒトエ)」だった。

「自社のものを履きなさいというルールはないんです。でも、1回履いてしまうと履き心地が良くて、そのまま履き続けてしまうんです」と話す営業部・松野幹男さんが履いていたのは「たびりら」の「月」。日が暮れて登ったばかりの月をイメージした黄色がまぶしかった。「たびりら」の定番カラーは6種類。「海」や「うろこ雲」など瀬戸内の自然をイメージしたネーミングも楽しい。

(2018年10月取材)

information

この記事をシェアする

  • facebook
  • Twitter
  • LINE

関連記事