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岡山大学 教育推進機構
共通教育部門
インタビュー
JR西日本 岡山支社 × 岡山大学 教育推進機構共通教育部門
インバウンドの拡大に
岡山大学の留学生と連携
JR西日本 岡山支社では、2023年より岡山大学 教育推進機構共通教育部門との連携を開始しました。岡山駅を利用する訪日外国人に対して、繁忙期を中心に岡山大学の留学生が案内をサポート。また、駅以外でも地域と連携したイベントで留学生が活躍しています。
連携に携わる、JR西日本 中国統括本部 駅業務部 課長代理の石井 竜児(いしい りゅうじ)さん、同社 岡山支社 ふるさとおこし本部の遠藤 茂仁(えんどう しげひと)さん、国立大学法人 岡山大学 教育推進機構共通教育部門 准教授の藤本 真澄(ふじもと ますみ)さんに、岡山大学L-caféで話を聞きました。
訪日外国人増加による
岡山駅の多言語対応で連携
はじめに、岡山支社と岡山大学の連携の内容について教えてください
石井 竜児さん(以下、石井) 連休期間や夏季・年末年始など駅利用者が多い時期に、岡山大学の留学生の皆さんに外国語対応スタッフとして、お客様への案内をお手伝いしていただいています。留学生が訪日外国人の方とJR社員との間に入って、外国語による説明でサポートする形です。
遠藤 茂仁さん(以下、遠藤) インバウンド需要の拡大により、訪日外国人の岡山駅のご利用が年々増加しています。特に列車の遅延や運行休止時などは、弊社だけではなかなか訪日外国人への対応が難しいという課題がありましたので、留学生の方のご協力は大変心強いです。
具体的には、留学生はどのような案内をしているのでしょうか
石井 訪日外国人のお客様に外国語で駅職員のところまで案内していただいています。詳細な説明などは、駅員が図や簡単な英語などで対応していますが、事前に基礎的な研修は実施していますので、留学生の方に直接案内してもらう場合もあります。
その他にも「のぞみ」が全席指定席であることの説明や、乗り換えの案内など、多言語による構内アナウンスも行ってもらっています。
岡山大学との連携は、どのような経緯で始まったのですか?
石井 2023年の夏、悪天候によって新幹線のダイヤが大幅に乱れたことがありました。繁忙期の上、訪日外国人観光客の方が大勢利用しており、外国語による案内に苦慮していたんです。その時に、既に弊社のイベントで連携していた岡山大学の留学生を紹介してもらったのが始まりです。
遠藤 JR岡山支社では、地域の方々と連携したさまざまなイベントを開催しています。もともとはそういったイベントで岡山大学の留学生の方に協力をしていただいていました。駅でも留学生の方の力を借ることができたらと思い、岡山大学の藤本先生に相談したところ、快くOKをいただきました。
石井 岡山大学の留学生の皆さんが大活躍してくれて本当に助かりました。その経緯があり、今も継続して繁忙期を中心に留学生の方に来ていただいています。
主体的な学びから生まれる
地域に根差した活動
岡山大学では留学生の受け入れに積極的で、留学生数は増加傾向にある。2024年度では約960人の留学生が在学しているという。
留学生はどのような形でサポーターとして参加しているのですか?
藤本 真澄さん(以下、藤本) 基本的には私から留学生に「こんな取り組みがあるけど、どう?」と紹介し、興味や意気込みのある学生が自主的に手を挙げてもらいます。駅やイベントでのサポートは、言語のみでなく、コミュニケーションの能力も必要です。取り組む内容と留学生との相性もあるので、向いていると感じた留学生が手を挙げやすいよう、内容をできるだけ詳細に伝えるようにしています。
「やってみたい」と感じた学生はすぐにその意志を伝えてきますね。逆に「やりたくない」と感じた人は手を挙げません。だから自然に良いマッチングが生まれていると感じています。
石井 駅に来てもらっている留学生方は、本当に皆さん熱心に取り組んでくれています。中には「鉄道が大好き」といってくれる学生もいて、私どもとしては、せっかく来ていただいているので、事前に行う研修では、案内に必要な知識を伝えるだけではなく、日本の鉄道を知ってほしい、学んでほしいと思って研修を行っています。普段なかなか見ることのできないところを見学してもらったり、私たちの仕事の内容や、鉄道のことを深く知ってもらうことで、学生の皆さんに何かよい体験として持ち帰ってもらえたらと思っています。
外国語対応スタッフとして参加し、留学生からはどんな感想を聞いていますか
藤本 取り組みを通じてJR・日本の鉄道業界を垣間見て、鉄道システムのすばらしさに感動したという声を多く聞いています。社員の方々のホスピタリティの素晴らしさにも触れ、「将来はこういう人たちと一緒に仕事がしたい」という声もありました。取り組みを通じて「JR西日本で働きたい」「鉄道業界で働きたい」と思うようになり、就職を目指している留学生もいるほどです。
石井 本当に嬉しい限りです。弊社からも、留学生の方が来てくれるのがとても心強いという声を多く耳にします。困っている人や声をかけた方よさそうな外国人を見つけて、積極的に話しかけに行ってくれる留学生もいます。話し方も、笑顔も本当に素晴らしくて、私たちも勉強になっています。
岡山駅構内でサポーターとして活躍する留学生の皆さん
人に触れ、地域に触れ
日本の文化に触れる
留学生による企業・団体やイベントへの協力の目的は、地域の活動への参加や地元の企業・団体と協力するなど、地域の方々とふれあうことで、日本の文化や地域ならではの魅力を体感してもらうこと。「何かの活動をするうえで、地域を知ることは基本であり、とても重要なこと」と藤本先生は話す。
遠藤 私たちとの最初の連携は、岡山駅周辺で毎年夏に開催している「サタデーナイトカーニバル」でした。インバウンド需要が拡大していることもあり、外国語による案内の必要性を感じたのです。
藤本 以前から、さまざまな企業や団体・イベントでも協力することがありましたし、教育の一環として学生にとって豊かな学びとなればと思い、協力させてもらっています。サタデーナイトカーニバルではイベントに訪れた外国人観光客にメニューの説明を行ったり、会場でイベントガイドとして活躍してもらっています。
土曜夜市では浴衣を着付けてもらって参加し、夜市の雰囲気を、写真や感想とともに母国に向けてSNS等で発信しました。浴衣を着るのも初めての学生がほとんどで、参加した留学生にとっても、本物の日本の文化を知る良い機会になったと思います。学生たちも、とにかくおもしろい、楽しいと喜んでいましたよ。日本の「祭(MATSURI)」を体験できたことが大きいようです。
遠藤 奉還町商店街の土曜夜市では、完全に地元の方々に馴染んでいましたね(笑)。自分が気にいったお店を、道ゆく人に嬉しそうにおすすめしている留学生もいました。
サタデーナイトカーニバルでサポーターとして活躍する留学生の皆さん
奉還町商店街土曜夜市で日本の文化体験・SNSで発信
双方にとってメリットのある
広がりのある取り組みへ
今後の展望を教えてください
藤本 岡山駅での案内は始まって1年ですが、参加した留学生からは大変好評です。日本の鉄道が好きになり、就職を目指したり実際に関連企業に就職したりする学生もいます。学生にとっての学びも大きいと感じているので、引き続きこの取り組みを続けていきたいですね。
石井 インバウンドが拡大する中、訪日外国人のお客様への案内の重要性はさらに増していくと予想しています。JRと学生と、双方にとってメリットのある取り組みとして今後も協力をお願いしていきたいです。
遠藤 今は、駅や駅周辺でサポートいただくことが多いですが、日本の文化・風土を知ったり、街づくりの観点からも、弊社が取り組むさまざまな地域共生の取り組みで留学生の活躍を期待しています。留学生の皆さんと多種多様な連携ができると良いですね。藤本先生そして留学生の皆さんの力をお借りしながら、互いに学びの多いものとなればと思います。
(2024年8月取材)
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